震災時における昼間都民対策検討委員会委員名簿

座長 東京大学教授 廣井脩
副座長 災害対策部長 佐藤兼信
国土庁 防災局震災対策課長 岡山和生
海上自衛隊横須賀地方総監部※ 防衛部第3幕僚室長 清水利広
関東運輸局 企画部長 森重俊也
東京海上保安部 次長 寺平東吾
東京郵政局 総務部長 山田欽次
関東地方建設局 企画部長 藤本貴也
(社)経済団体連合会 産業本部長 永松恵一
東京商工会議所 地域振興部長 板垣忠愛
(社)東京青年会議所 理事都市政策室室長 蓮見恵一
日本放送協会 総務局総務部長 山崎大樹
(社)日本民間放送連盟 業務部長 中谷洋一
(社)日本新聞協会 編集部長 鳥居元吉
(社)日本民営鉄道協会 企画部長 高井正剛
東日本旅客鉄道(株) 安全対策部課長 河野浩一
(社)東京バス協会 常務理事 安部義男
関東旅客船協会 事務局長 殿村嘉彦
(社)日本船主協会 常務理事総務部長 鈴木昭洋
(社)日本外航客船協会 事務局長 後藤強
東海汽船 総務部副部長 東清
日本電信電話鞄結梹x店 設備部企画部門災害対策室長 深瀬茂雄
東京電力 総務部防災グループマネージャー 小石川貞雄
東京ガス 防災・供給センター所長 高橋邦碩
東京百貨店協会 事務局長 田中維武
交通情報サービス 常務取締役 伊藤昊太郎
ヤマト運輸 取締役総務部長 遠藤英男
日本ホテル協会 葛梔、プラザホテル施設部長 植草勇夫
全国ホール協会 事務局長 岡本実
全国地下街連合会 新宿地下駐車場鰹務取締役 竹田博直
東京都興行環境衛生同業組合 専務理事 林騏一郎
東日本遊園地協会 特別顧問 鈴木歳男
鞄結档hーム 総務部長 内藤智夫
(社)日本フランチャイズチェーン協会 潟Zブンイレブンジャパン取締役副会長 清水秀雄
(社)日本フードサービス協会 広報室長 千葉国雄
東京都石油商業組合 事務局長 中島英雄
(財)日本武道館 総務部長 石濱義朗
(財)日本相撲協会 理事 小畑 敏満(北の湖親方)
日本私立大学団体連合会 (学)玉川学園総務部長 山下等
東京私立中学高等学校協会 保善高等学校理事長 増田晃次郎
東京私立初等学校協会 理事 武田博信
埼玉県 防災局長 村松義規
練馬区 総務部長 清水勝彦
羽村市 市民部長 臼井正
政策報道室 広報部長 松澤敏夫
主税局 ' 総務部長 北村隆史
生活文化局 総務部長 萩原廣一
都市計画局 防災都市づくり推進担当部長 林孝二郎
福祉局 生活福祉部長 渡邊泰弘
衛生局 医療計画部長 荻野忠
労働経済局 総務部長 早川良躬
建設局 総合調整担当部長 川島英男
港湾局 港営部長 阿部功
教育庁 総務部長 大久保隆
交通局 総務部長 橋本勲
水道局 総務部長 石山伸彦
警視庁 警備部災害対策課長 國近時雄
東京消防庁 防災部長 小林茂昭
総務局 災害対策部防災計画課長 原嶋映夫

震災時における昼間都民対策検討委員会報告

(最終報告)
平成11年3月


i

平成10年度震災時における昼間都民対策検討委員会事務局
東京都総務局災害対策部防災計画課
〒163-8001東京都新宿区西新宿2-8-11
電話 5388-2486(ダイヤルイン)
5321-1111(内線)24-928-929


第1部 はじめに

 本報告は、平成10年2月の「震災時における昼間都民対策検討委員会報告(その1)」を踏まえ、帰宅困難者等への情報伝達等の個別課題の対策のあり方について、本委員会が1年間検討した結果を最終報告としてまとめたものである。
 委員会設置の経緯、平成9年度の検討結果、平成10年度の検討内容については、以下に述べるとおりである。
※昼間都民とは、一般的に他県から都内に通勤・通学している人をいうが、本報告でいう昼間都民には、こうした人々のほか、都内在住者で電車等の交通機関を使用し、都心部等へ通勤・通学している人々や、都心部等の繁華街に買物やレジャーに来ている人々など、交通途絶時に影響を受ける人々も含むものとして取り扱う。

第1章 委員会設置の経緯

 東京都の都心部や多摩地域の大都市においては、職場、学校、集客施設などに、毎日多くの人々が通勤通学、買物等で来ている。都内全体の昼間時の外出者数は、1日平均約819万人と予測されている。
 これらの人々は、大量輸送手段である鉄道・バス等の陸上交通を利用しており、大地震によりこれらの交通機能が停止した場合、数百万人の滞留者が発生することになる。特に、買物等で繁華街にいる人々は、地理に不案内であることが多く、余震の恐怖や家族の安否への気づかい、長時間の待機、季節によっては暑さ寒さなどにより、心理的に不安定な状況に陥る可能性がある。こうした中で、大勢の人々がターミナル駅周辺等に殺到し、パニック(大規模な混乱)に巻き込まれるおそれもある。
 また、多数の徒歩帰宅者が発生するが、その中には、自宅が遠隔なため帰宅をあきらめたり、一旦徒歩で帰宅を開始したものの、途中で帰宅が困難となる人々が発生する。東京直下地震の被害想定では、こうした帰宅困難者が約371万人発生すると予測されており、大きな社会的混乱が懸念される。
(下表参照)。
これら帰宅困難者を始めとする外出者(以下、「帰宅困難者等」という。)に対する情報の提供、保護・支援、代替交通手段の確保などの対策が求められていることから、東京都は、平成9年5月に、廣井脩東京大学教授を座長とし、区市町村、国、近隣県(市)、鉄道機関及び経済団体、都の関係局等で構成される「震災時における昼間都民対策検討委員会」を設置し、その対策について協議を進めてきた。

(表)「東京直下地震の被害想定」における外出者、帰宅困難者の発生予測

外出者全体 819万人 通勤通学者(組織に属している。) 5.72万人 買物客等(組織に属していない。) 247万人
外出者のうち帰宅困難者 371万人 通勤通学者(組織に属している。) 287万人 買物客等(組織に属していない。) 84万人

(注1)帰宅困難者とは、震災時に交通機関が使用できなくなったとき、自宅が遠距離のため、徒歩による帰宅が困難になる外出者。
(注2)この他に、関東地域外から来都している観光・レジャー客が外国人を含めて約74万人となっており、この人々についても、買物客等(組織に属していない。)と同様の問題が発生する。

第2章 平成9年度の検討結果


 平成9年度においては、委員会での検討事項が多数にわたっていること及び具体的な対策の調整にはある程度の時間が必要であること等から、基本原則や関係機関の対策の大枠を以下のように設定し「報告その1」として公表した(平成10年2月)。

く基本原則>

@「組織は組織で対応する」こと、即ち、発災時には組織の責任において安否確認や交通情報等の収集を行い、被害状況を十分に見極めた上で従業員や顧客への対応を図り、帰宅する者については安全確保の観点に留意して、緩やかに順次帰宅させること
A関連する全ての機関と事業所、昼間都民自身の責務と役割を明確にし、分担して対策を実施すること
B関係機関が相互に連携・協力するしくみづくりを進め、帰宅困難者等への支援体制の構築を図っていくこと

<関係機関の対策>

@帰宅困難者対策の計画化
A情報収集伝達体制の構築
B安否確認手段の確保
C水・食料等の備蓄
D代替交通手段の確保
E救護対策の実施
F事業所等への啓発
G都民等への啓発
H訓練の実施


第3章 平成10年度の検討内容


 平成10年度においては、平成9年度の検討結果を踏まえ、情報提供方法などその具体化を図るため、新たな委員を加えさらに検討を進めた。
 また、専門的立場からの検討を深めるため、委員会の下に個別課題ごとに、「情報伝達部会」、「事業所・集客施設部会」、「帰宅支援部会」及び「代替交通手段部会」の4部会を設置した。各剖会長は、それぞれ廣井脩東京大学教授、熊谷良雄筑波大学社会工学系教授、中林一樹東京都立大学都市研究所教授、都総務局災害対策部長である。
 今回の最終報告は、「報告その1」に続くものであり、各部会の検討を基に帰宅困難者等への情報提供など、個別課題の対策のあり方について提言するものである。
 本委員会の検討経過は、資料1「震災時における昼間都民対策検討委員会及び情報伝達部会検討経過」のとおりである。また、委員会・部会の構成員は、資料2「委員会・部会名簿」のとおりである。

第2部 検討結果

第1章 予測される事態とその原因

第1節 予測される事態

(1)都心部でのパニックの発生

@集客施設等におけるパニックの発生
 大地震時には、百貨店、劇場、映画館、野球場、駅、オフィスビルなど、見ず知らずの人が大勢集まる集客施設及び事業所(以下、「集客施設等」という。)では、揺れや停電、商品等の転倒、落下などにより、人々は心理的に動揺している。情報伝達が迅速・正確に行われないと、買物客・観客等はどう行動してよいかわからず、飛び交うデマや流言で勝手な行動をとりはじめ、大きな混乱が発生するおそれがある。
 また、地下街や劇場、映画館などの閉鎖的な空間では、火災の発生の不安や、停電により暗闇の中に閉じ込められるという不安などから、一斉に出口に殺到しけが人が発生するなど、より危険な状況が発生するおそれがある。さらに、集客施設等には、高齢者や子供連れなど様々な人が来ており、こうした人々の中には気分が悪くなったり、けがをしたり、自力で避難行動ができない人が出てくることが予想される。
Aターミナル駅周辺等におけるパニックの発生
 集客施設等の外へ脱出した買物客や路上で大地震に遭遇した人々は、情報や保護を求めてわれ先にターミナル駅周辺や公共施設へ殺到することが予想される。鉄道や道路の被害・運行情報、振り替え輸送情報、自宅付近の被害情報等を求める人々に対し、情報提供など適時に十分な対応がなされないと、デマや流言が発生し、混乱が生じるおそれがある。判断がつかないまま避難しようとして、かえって危険な場所に向かい、そこで負傷するなど、被害の拡大につながる行動を起こすおそれもある。
 また、情報を待って長時間、駅頭周辺に滞留し、身体の変調をきたしたり、季節によっては・寒さ・暑さを訴える可能性もある。さらに・トイレト水・食料等を求める人も出てくることが予想される。特に、高齢者や子供連れの外出者等は、行動が制約される上に、水や食料が得られないなど、より困難な状況に陥る可能性がある。
(2)徒歩帰宅行動時の混乱
自宅へ向かって歩きだした徒歩帰宅者は、帰宅経路を知らないことや、停電による暗闇の中を歩いてしまうことなどにより、道に迷ってしまう。また、正確な情報が伝わらないため、ガレキが散乱した危険な道路を歩いたり、延焼火災が切迫する危険地域へ誤って向かうことも予想される。
また、自宅が遠隔なため帰宅をあきらめたり、一旦徒歩で帰宅を開始したものの、水・トイレ等を得られないなど徒歩帰宅を行う上で障害が多く、途中で帰宅が困難となる者が発生するさaζ・暑さや寒さによる病気や障害物等によるけがも心配される。
 こうした帰宅困難者個人の問題とともに、大量の徒歩帰宅が行われることによる沿道での混乱も予想される。

第2節 その原因

(1)帰宅困難者問題への不十分な理解

 震災時における帰宅困難者等の問題は、昼間都民の誰もが直面する可能性があるにもかかわらず、この問題に対する昼間都民自身や、事業所の理解が必ずしも十分ではない。
 例えば、通勤通学や買物途上での有力な情報収集手段である携帯ラジオを持っている人の割合は、従業員では38.0%(「大震災対策のための心理学的調査研究 平成9年度-帰宅困難者に対する事業所責任者・従業員の意識-」)とされており、買物客等ではさらに割合が少ないと推測される。
 また、事業所において、食料の備蓄などで帰宅困難者の発生に備えているところは、39.0%(「大震災対策のための心理学的調査研究 平成10年度-大震災発生に伴う大規模なライフライン途絶下における事業所及び都民の行動予測-」)、であり半数にも満たない。この問題に対する事業者の認識の低さが窺える。

(2)情報収集・提供手段の欠如

 帰宅困難者等が必要とする情報を適時・的確に収集・提供できる手段が、現状では十分整備されていない。
@鉄道事業者や道路管理者は、鉄道・道路の被害・運行、振り替え輸送手段に関する情報について、当該機関の情報を個別に収集しているが、現状では個別に収集されたそれらの情報を、迅速に整理・統合する仕組みがない。
 また、情報提供についても、駅頭では案内文・テロップ等で情報が提供されるが、混乱した状況下で、多くの人に同時に情報を提供するには限界がある。
 さらに、帰宅途上の沿道では、水・トイレの提供場所など、帰宅支援情報や自宅付近の被害情報など、帰宅困難者等が必要とする情報を提供する施設・設備がない。
Aラジオ・テレビ等のマスメディアの放送からは、必ずしも帰宅困難者等が知りたい時に知りたい情報が得られない。
 これらのメディアからは、現状でも、被害情報、鉄道・道路情報等の全体状況は流される。
 しかし、帰宅経路や自宅周辺の具体的な被害情報など、帰宅困難者等が必要とする個別的な情報は詳細には放送することは難しく、帰宅支援情報の観点からみれば十分でないことが予想される。これは、情報収集側の関係機関の提供体制の未整備と、災害時の放送機関の使命全体の中で個別に放送できる情報量の両面から難しいことによるものである。

(3)集客施設等内での不十分な対策

 集客施設等の中では、地震時には、揺れているとき、揺れが収まったとき、さらに様子を見ながら避難するときなど、状況に応じた買物客等への情報伝達、誘導が求められるが、このような安全確保体制がすべての施設で必ずしも十分に整備されていない。
 また、施設外への避難誘導が、火災の延焼状況などの施設外の被害状況を十分把握した上で適切に行われていない。
 さらに・交通が遮断している場合は・買物客等は徒歩帰宅を余儀なくされるが、その人々の円滑な徒歩帰宅を支援する対策が十分立てられていない。他方、施設内に留まる人々に対する水・食料等の提供等の適切な保護・救護が十分用意されていない。

(4)ターミナル駅周辺等の地域全体で協力・支援する仕組みの未整備

 建物が一時的に使用不能になった場合などの買物客等に対する安全確保、避難誘導は、個々の集客施設等だけでは対応が難しいにもかかわらず、地域の施設間等で相互に連携・協力する仕組みが十分でない。
 また、ターミナル駅周辺等での対策が十分でなく、情報等を求めて殺到する多数の昼間都民を受け入れ、誘導し、保護する体制が整備されておらず、気分が悪くなった人が一時的に休息できる施設が、ターミナル駅周辺に用意されていない。
 一方、ターミナル駅に近接する公共施設では、昼間都民が殺到する可能性があるが、それに対する受け入れ対策が十分に準備されていない。

(5)帰宅支援対策の未整備

 徒歩帰宅者が安全に自宅まで帰るには、水、食料、トイレ、休息、帰宅支援情報などが必要であるが、現状ではそれらの支援施設・サービスが帰宅の沿道上に十分に用意されていない。
 さらに、高齢等の理由で、自力での長距離の徒歩帰宅が困難なため、相当期間滞留を余儀なくされる帰宅困難者に対して、代替交通手段を用意することが望ましいが、現在ではその仕組みが確立されていない。

第2章 昼間都民対策のあり方についての提言


 前記「第1章 予測される事態とその原因」を踏まえ、高齢者や子供連れを含む帰宅困難者等が混乱に巻き込まれることなく、安全に帰宅するために、本委員会は、以下のような対策を実施することを提言する。
 本委員会が提言する時系列的な体系を図示すると、図1「昼間都民対策の体系」のとおりであり、空間的なイメージを図示すると、図2「昼間都民対策の空間的イメージ」のとおりである。

第1節 普及啓発

 昼間都民が、帰宅困難者問題に理解を深め、自ら対策を講じるよう、行政、関係各機関・各団体は、以下のように積極的に働きかけることが必要である。

(1)普及啓発の内容

 携帯携趨ラジオや携帯テレビは、小型で持ち運びに便利であり、電源の心配がないことなどから、通勤通学途上での情報収集手段としては最適である。
 また、帰宅困難者等が帰宅行動を起こす事業所・学校を起点とし、自宅のある近隣県(市)や多摩地域に到る地図を事前に作成し、徒歩による帰宅ルートを平常時に確認しておくことは、自力で帰宅する上で有効である。出来れば、実際に歩いて帰る訓練を行っておくと安心である。
 以上のことから、長距離の通勤通学者に対し、「自らの身の安全は自らが守る」という視点に立ち、
@情報収集に必要な携帯ラジオなどを携行すること
A帰宅地図の作成など徒歩帰宅経路の確認を行うこと
B歩いて帰る訓練を行うこと
などを内容とする「帰宅困難者心得10か条」の普及を働きかける。
また、買物客等に対しても、出来るだけ同様の対策を行うよう呼びかける。

(参考)帰宅困難者心得10か条

@慌てず騒がず、状況確認
A携帯ラジオをポケットに
Bつくっておこう帰宅地図
Cロッカー開けたらスニーカー(防災グッズ)
D机の中にチョコやキャラメル(簡易食料)
E事前に家族で話し合い(連絡手段、集合場所)
F安否確認、ボイスメールや遠くの親戚
G歩いて帰る訓練を
H季節に応じた冷暖準備(合羽、携帯懐炉、タオルなど)
I声を掛け合い、助け合おう

(注)「ボイスメール」の正式名称は、「災害用伝言ダイヤル」である。

(2)普及啓発の方法

@都・区市町村による普及啓発

 都・区市町村は、関係各機関・各団体に対し、ラジオなど情報収集に必要な装備等の準備、徒歩帰宅経路の確認を行うことなどを内容とする「帰宅困難者心得10か条」や、帰宅支援が行われる対象道路の普及啓発を、パンフレット等により行うよう努める。
 また、帰宅困難者等の自発的な帰宅行動を育成する視点に立ち、総合防災訓練等において徒歩帰宅訓練を行うとともに、NPOなどの行う徒歩帰宅訓練に対し、帰宅支援施設を提供するなどの協力・支援を行うよう努める。

A各機関・各団体による普及啓発

ア 関係する各機関・各団体は、普及啓発用ポスター、ちらし等の掲示・配布に協力するよう努めるとともに、可能であれば各機関・各団体の特性に応じて作成するのが望ましい。
イ 事業所・学校は、従業員・生徒に対し、「帰宅困難者心得10か条」等に基づき、ラジオの携帯や帰宅地図の作成、徒歩帰宅訓練などを働きかけるのが望ましい。

B七都県市等による普及啓発

 県(市)境を越えて発生する帰宅困難者問題に対しては、広域的連携で普及啓発に取り組む必要がある。
 例えば七都県市は、普及啓発用の共通パンフレット・ポスター等を作成・配布し、共同のキャンペーン・アピール活動を行うとともに、区域内の区市町村が住民に対して普及啓発を行うよう働きかけるのが望ましい。

第2節 情報収集・提供の仕組みづくり

 一時的に大量に発生する帰宅困難者等に対し迅速・的確に情報を提供するために、関係機関は関連する情報を総合的に収集・提供する仕組み及び体制を整備する必要がある。
 現在、都は、都防災行政無線や都災害情報システムにより災害情報を収集し、適宜、プレス発表や報道機関への放送要請により、帰宅支援に役立つ情報を提供していくこととしている。
 しかし、約371万人に及ぶ帰宅困難者に対し、その個別・多様な情報ニーズに応えていくためには、これまでの対策だけでは不十分である。
 このため、情報提供の内容について、新たな情報提供の手段を取り入れながら、より帰宅困難者のニーズに適した情報提供の仕組みづくりを整備する必要がある。

(1)情報提供の内容

@余震・液状化情報・火災・建物被害情報、駅周辺情報など誰もが共通に知りたい情報
A鉄道・道路の被害・運行情報、振り替え輸送情報、帰宅支援情報、自宅付近の被害情報な
ど帰宅困難者が個別的に知りたい情報
B情報取得場所・方法など、個別的な情報を得るための情報
(2)情報提供の方法
@インターネットを活用による情報ネットワークの構築
 阪神・淡路大震災以降、インターネットは、災害に強い通信特性を有していることなどにより、震災時の情報伝達手段としての有効性が注目されている。また、ホームペ-ジ・リンクシステムで結ばれることにより、誰でも、必要な時に、必要とする情報にアクセスできる開かれたシステムは、災害時の情報共有化に大きな役割を発揮することが期待される。
そこで、鉄道の運行状況など、帰宅困難者等に対する情報提供についても、インターネットを活用し、一定のルールの基に、都が作成する帰宅支援のためのホームページに関係機関の情報を集約し、共有化していく仕組みを築く。
(ホームページ.リンクシステムは、」個々に各機関のホームページを検索しなくても、関連情報に容易にアクセスできる仕組みである。)
 集客施設等や各関係機関は、インターネット上に開設された帰宅支援ホームページから、必要に応じて情報収集することにより、帰宅困難者等に対して適時・的確な情報を提供する。こうした仕組みづくりのために、都は「帰宅支援ホームページのネットワークシステム」(別紙1参照)を構築するとともに、関係機関は、インターネット上に自社関連情報を迅速に入力する体制を整備することを検討する。
 なお、こうしたネットワークシステムを確立するためには、いくつかの課題もある。
 災害直後の緊迫した状況で、こうした迅速な状況把握には、大きな制約が加えられることを考慮しなければならない。現状では、関係機関が災害時に入力するための人員の確保や操作の熟練等入力体制の整備が課題となっている。
 また、インタ-ネットを災害時に迅速に立ち上げ、利用してくためには、あらかじめ統一されたフォーマットや簡便な入力方法を用意するとともに、平常時からの運用体制を確立する必要がある。
A各機関・各団体のネットワークによる情報提供
施設内にいる組織に属している人への情報提供は、組織の責任において行うことができるが、路上や駅頭にいる通勤通学者及び組織に属していない人(路上や駅頭の買物客等)への情報提供は、十分ではない。
 このため、以下に述べるように、関係する各機関・団体が持つ事業所間のネットワーク等を活用することにより、地震発生直後から帰宅までの行動段階に即して、帰宅困難者等が求める情報を提供し、円滑な徒歩帰宅行動を促す。
ア 駅頭等での大型ビジョン等による情報提供
 大勢の人々が集まる場所では、視覚に訴えることにより情報提供を行うことが効果的である。このため、都は、ターミナル駅周辺等に設置されている企業の情報提供設備(大型ビジョン)の設置者に対して、可能な限り、災害時にテレビなどの災害情報に画面を切り替えてもらうよう働きかける。
 また、都は、この大型ビジョンにおいて、パニック防止行動の呼びかけ、情報の取得場所や方法など、個別的な情報を得るための情報を提供することを検討する。
イ 駅及び交番等による情報提供
 駅は、自ら収集した、又はインターネットや放送機関などから収集した鉄道・道路の被害・運行情報、振り替え輸送情報などの個別情報を、掲示、拡声器、ラジオ受信機等により、乗客や駅前に集まる人々に提供することを検討する。
 また、鉄道機関等は、運行情報をテレホン・サービスなどにより提供するよう努める。
 交番は、駅、警察署、放送機関等から収集した個別情報を、掲示や拡声器等で提供するよう努める。
 事業所・集客施設は、インターネットや放送機関などから収集した個別情報を、掲示や拡声器、ラジオ受信機等で通行人等に提供するよう努める。
ウ 帰宅支援施設等による情報提供
 一時休息所や帰宅支援施設(後述)は、インターネット等から収集した帰宅支援情報などの個別情報を、掲示やラジオ受信機等を活用して帰宅困難者等に提供するよう努める。
B放送・報道機関による情報提供
 都内にあるテレビ・ラジオの多くの局は、全国キー局としての機能も有している特殊性から、災害時には、災害の全体状況や、近隣支援のための情報などを発信する役割を有している。このため、帰宅困難者等向けの詳細情報のみを優先して、まとめて定時的に流すことには一定の制約がある。
 こうした状況を踏まえ、放送・報道機関は、帰宅困難者等に対し、次のような方法により十分な情報提供に努める。
ア 都は、放送機関が容易に情報提供できるように、帰宅困難者等向けの情報を方面別・路線別にまとめるなど、マスメディアヘの提供方法について工夫するとともに、平常時から情報伝達訓練を行うことなどにより、提供の実効性を確保するよう努める。
イ 放送機関は、どの手段を用いれば(例:インターネット)、どこに行けば(例:帰宅支援施設)必要な情報を得られるかを提供情報の中に加え、テレビの場合には画面上にL字型の字幕速報なども活用して放送する。さらに、東京都から提供された帰宅困難者等向けの情報を放送することを検討する。
な お、テレビ放送機関は、放送のデジタル化など放送技術の進歩にあわせて、災害時のデータ放送など帰宅困難者等向けの放送の一層の充実を検討する。
ウ ローカル・メディアの活用
 MXテレビ、コミュニティFM等のローカル・メディアは、詳細な被害情報の提供など、帰宅困難者等のニーズに効果的に対応することが可能であることから、その内容を積極的に放送することを検討する。

第3節 事業所・,集客施設における対策の推進


(1)事業所・学校学癒等におはゑ「組織対応原則」の推進

 平成9年度における検討結果で基本原則とされた、「組織は組織で対応する」という組織対応原則に基づき、事業所、学校(以下、「事業所等」という。)における従業員、生徒等の保護・情報の確保・食料の値蓄等を内容とする帰宅困難者対策を積極的に推進する必要がある。このため
@都及び区市町村は、「組織対応の原則」に基づく対策の考え方を、それぞれの地域防災計画に基づき普及啓発するとともに、東京消防庁は、各事業所の防災計画の中に帰宅困難者対策の内容を盛り込むよう指導していく。
A事業所等は、一時期に集中して帰宅者が発生することのないよう、順次帰宅計画を作成する。

(2)「集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」の作成・普及

 集客施設等は、従業員や顧客の安全確保などの役割を認識して、従業員等の保護や帰宅困難者対策のために通信手段の確保並びに非常用食料等の備蓄やその他必要な対応策を講ずるなど防災対策の推進を図るものとされている。これらの対策の実施を図るため、東京消防庁では、集客施設等の防災計画へ反映させることなどを指導している。
 これに基づき、各施設は地震対策を推進することとしているが、買物客等、組織に属していない人々の安全を確保し、さらに地域全体の安全を確保するには、集客施設等は従来の対策に加え、次の視点に配慮した防災対策を進めるのが望ましい。

<防災対策上の新たな視点>

@買物客等が安全に安心して避難するためには、様々な情報を必要としており、施設内の被害状況・火災の有無はもちろん、施設外の被害情報、鉄道・道路の被害・運行情報、帰宅支援情報、情報取得の場所や方法など、安全・安心情報を収集する必要があること
A施設内の買物客等に対して、揺れているとき、揺れが落ちついたときなど、状況に応じた情報を提供する必要があるとともに、施設外の通行人に対しても、可能な限り安全・安心情報を提供することが望ましいこと
B状況に応じて、施設内で、余震、火災等から身の安全を図れる場所を確保するとともに、施設外に、避難場所など、買物客等を安全に避難誘導できる場所を定めておく必要があること
C避難誘導導線の安全を確認の上、適切な方法で避難誘導先まで誘導するとともに、子供、お年寄り、女性など災害弱者となる人々も多く利用していることに配慮した避難誘導を行う必要があること
 また、帰宅行動が一時に集中することによって、ターミナル駅周辺等や帰宅途上の沿道で混雑が生じないよう、緩やかに順次帰宅させる必要があること
D買物客等の沈着冷静な行動を促すため、通信手段の確保状況に配慮しつつ、日本電信電話鰍フ「災害用伝言ダイヤル」など、家族の安否が確認でき、自分の安否を伝えられる安否確認方法を周知する必要があること
E繁華街等で発生する多数のけが人に対し、行政が即座に対応することには限界があり、集客施設等は、施設内で発生するけが人、病弱者、子供・お年寄りなど保護が必要となる人々への相談・案内体制をつくるとともに、水・食料、トイレ、救護体制を確保する必要があること
 また、施設外の被災者に対しても、可能な限り救護・保護することが望まれること
F建物が一時的に使用できなくなる場合など、自らの施設では買物客等の安全を確保できない場合に備えて、地域の集客施設等間で、避難する場所の相互提供、水・食料の相互支援、情報交換等を行う必要があること

 これらの新たな視点を加えた安全対策を普及させるため、本委員会は、集客施設等における対策を分かりやすくまとめた「集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」(下記参照)、「同作成資料」(別紙2)を提案する。

(表)集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」(集客施設等が行う買物客・来客等への対策のポイント)

(ポイント1)施設内・外の安全・安心情報を迅速・的確に収集する。
〈ポイント2)安全・安心情報を、施設内の買物客に適時・的確に提供するとともに、施設外の通行人に対しても可能な限り提供する。
(ポイント3)状況に応じて、施設内、又は施設外に安全に避難誘導する場所を定める。
(ポイント4)避難者が不安を持たず、安全確保のための適切な行動ができるように避難誘導するととに、その後の帰宅行動が一時に集中することのないよう働きかける。
(ポイント5)通信手段の確保状況に配慮しつつ、家族等との安否確認方法を周知する。
(ポイント6)施設内のけが人の救護、病弱者、子供・お年寄りの保護を行うほか、施設外の被災者にしても可能な限り救護、保護を行う。
(ポイント7)施設等間で相互に助け合う。

@都・東京消防庁・区市町村は、「集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」及び「同作成資料」を基に、経済団体等の各機関・各団体等に対し、パンフレット等によりそれぞれの団体の特性等に応じたマニュアルの作成を働きかける。'
A経済団体等の各機関・各団体は、これらを参考にして、集客施設等に対し、それぞれの施設の特性等に応じたマニュアルの作成を働きかけるよう努める。
B集客施設等は、これらを参考にして施設特性に応じてマニュアルを作成するとともに、施設内のパニック防止体制づくりを行うのが望ましい。

第4節 ターミナル駅周辺等での混乱防止対策

 大量の帰宅困難者が滞留するターミナル駅周辺等の混乱を防止するためには、個々の施設の対策に加えて、駅、集客施設、行政等が相互に連携・協力して、地域全体としてパニックを防止する体制を構築する必要がある(施設のみの安全から地域全体の安全へ=ゾーン・ディフェンスの考え方)
 このため、次のような対策を検討する。

(1)混乱防止計画の作成

 ターミナル駅周辺等人が集まりやすい地域において、昼間都民に対する混乱防止計画を作成する。
 現在、東京都地域防災計画において、警視庁、東京消防庁の役割が規定されている「ターミナル駅等の混乱防止策」があるが、ターミナル駅周辺で滞留する昼間都民が混乱なく待機し、情報の提供を受け、必要な場合に保護を受けるためには、これを充実強化することが必要である。
 都・区、ターミナル駅周辺等の各機関・各団体が策定する新たな「ターミナル駅周辺等の混乱防止計画」において、一時的に人を待機させる場所や誘導路などの設定、トイレの確保、案内標識、情報提供の方法、身体の変調や疲労を訴える人等のための保護施設として一時休息所を定める。
 なお・都・区市は・混乱防止計画について、地域防災計画の中に位置づけることが望ましい。

(2)一時休息所の提供

ア 一時休息所の確保

 ターミナル駅周辺等では、身体の変調や疲労を訴える人等に対する休息所を可能な限り用意する必要がある。
 このための施設として、駅舎内、自治体庁舎内、比較的大規模な集客施設等において一時休息所を確保することが望まれる。
 また、余力のある範囲でターミナル周辺の事業所にも、施設の提供を広く呼びかけることが求められる。
 主なターミナル駅周辺等における混乱防止計画を作成するに当たり、次の施設を一時休息所として提供することが考えられる。

東京駅周辺 駅舎の一部、公共施設の一部、東京国際フォーラム施設の一部等
上野駅周辺 駅舎の一部、公共施設の一部、東京文化会館施設の一部等
新宿駅周辺 駅舎の一部、公共施設の一部・東京体育館施設の一部、東京都庁の一部等
池袋駅周辺 駅舎の一部、公共施設の一部、東京芸術劇場の一部等
渋谷駅周辺 駅舎の一部、公共施設の一部

イ 一時休息所での受け入れ

 一時休息所では、短時間の休息の場を提供するとともに、必要に応じて水、トイレ等を提供する。
 また、医療救護を必要とする場合は、最寄りの医療救護所や医療機関へ搬送するなど適切な措置を講じる。
 さらに、高齢等を理由に徒歩帰宅が困難な昼間都民に対しては、区市と協力し、避難所等への受け入れを検討する。

ウ 一時休息所の周知

 一時休息所の一般都民等への周知については、関係機関と協議の上、適切な広報体制を実施することが必要である。

第5節 徒歩帰宅行動時の支援対策

(1)帰宅支援体制の構築

 大量の徒歩帰宅者が円滑に帰宅できるよう、都心部と他県市及び多摩地域を結ぶ幹線道路沿いに帰宅支援施設を配置するとともに、支援体制を構築する必要がある。
 帰宅支援は、帰宅者ニーズを考慮した上で、行政、民間がそれぞれの役割を果たしながら、次のように連携協力して行われることが望ましい。
 なお、周辺県市においても、徒歩帰宅が円滑に行われるよう地域の実情こ応じて、帰宅支援施策を整備することが望ましい。

@「帰宅支援ステーション」(仮称)の配置

 都は、保護を必要とする帰宅困難者に対して適切なサービスを提供するため、関係機関の協力により、「帰宅支援ステーション」(仮称)を配置する。「帰宅支援ステーション」の配置にあたっては、集配郵便局、都立学校、東京武道館等、都・区市町村の公共施設等の活用について検討する。
 同ステーションは、水・食料、トイレ、休息の場の提供、沿道情報の提供等を行う。

A「帰宅支援サプステーション」(仮称)の配置

 都は、「帰宅支援ステーション」を補完する施設として、関係機関の協力により、「帰宅支援サブステーション」(仮称)を配置する。同サブステーションは、営業時間の比較的長い民間施設であるコンビニエンスストア、ファミリーレストラン、給油取扱所(ガソリンスタンド)等に広く呼びかけて配置する。
 同サブステーションでは、営業を継続し、水、食料等を販売し、トイレ、情報等の提供に努める。

B「帰宅支援マーク」(仮称)の作成等

 都は、「帰宅支援ステーション」施設等を明示するため、帰宅支援マークや案内標識の作成について検討する。

C食料等の備蓄の整備

 帰宅困難者の食料備蓄にあたっては、通勤・通学者等「組織に属する人」に対応した備蓄は、組織で対応することが原則である。
 都は、区市町村と協力し、組織から支援の受けられない買物客等に対応した食料等の備蓄の整備に努めることが望ましい。

(2)帰宅支援の対象道路の選定

 帰宅支援は、遠距離の徒歩帰宅者に対して効果的に実施する必要がある。
 このため、帰宅支援の対象道路を選定し、その沿道に帰宅支援施設を配置することが適当である。
 委員会として、次の条件をみたす16路線を帰宅支援の対象道路として推奨する(別紙3参照)。

@都心からの放射状に延びており、かつ被災者の避難路になっている緊急交通路のうち、
ア 都県境を越える11路線
イ 多摩地域において国道16号線に到る3路線
A都心を迂回する環状路線で、被災状況により内側に交通規制が実施される2路線

 これらは、次の16路線である。

@放射状路線 1第一京浜 日本橋〜六郷橋
2第二京浜 日本橋元標〜多摩川大橋
3中原街道 中原口〜丸子橋
4玉川通り 三宅坂〜二子橋
5甲州街道 桜田門〜八王子
6青梅街道・新青梅街道 新宿大ガード西〜箱根ヶ崎
7川越街道 本郷3〜東埼橋
8中山道 宝町3〜戸田橋
9北本通り 王子駅〜新荒川大橋
10日光街道 日本橋元標〜水神橋
11水戸街道 本町3〜新葛飾橋・金町〜葛飾橋
12蔵前橋通り 湯島1〜市川橋
13井の頭通り 大原2〜関前
14五日市街道 関前〜福生
A環状路線 1環状7号線
-
2環状8号線 -

 なお、東京電力鰍ヘ、上記幹線道路については、夜間での徒歩帰宅者の安全を確保するため、必要に応じて、交差点等の照明の確保について検討す乱

第6節  代替交通手段の整備
 大地震時に鉄道、バス等の通常の交通手段が機能しない場合には、大量の帰宅困難者の輸送手段はなく、徒歩による帰宅しかない。
 しかしながら、高齢等の理由で、自力での長距離の徒歩帰宅が困難なため、相当期間滞留する帰宅困難者に対しては、代替交通手段を整備することが必要であると考えられる。
 そのため、都及び関係機関は、以下のような代替交通手段を整備するよう検討するよう努める。
 なお、今回は、多くの帰宅困難者等が発生する都心部を起点とした代替交通手段の整備を中心に検討した。

(1)代替交通手段の実施時期及び実施対象について

 地震直後は、消火、救助、救援活動等に総力を傾ける必要があり、利用できる交通手段は、こうした応急対策活動に優先して向けられる必要がある。このため、応急対策活動とのバランスを考慮すると、代替交通手段は、消火、救急など応急対策活動がある程度収束した後、なお滞留を余儀なくされる高齢者や障害者、乳幼児連れの親子等自力での長距離の徒歩帰宅が困難な人等を対象に実施するのが適当である。

(2)代替交通手段及び輸送ルートの確立について

 代替交通手段については、震災時に利用が可能なこと、大量の輸送等ができること等を考慮して、海上、河川を利用した船舶や道路障害物除去が行われる緊急交通路を利用したバスによる輸送が適当である。
 代替交通手段を効率的に行うためには、出発地点や到着地点等を明らかにした実践的な輸送体制を確立する必要がある。
 このため、輸送ルートを設定する必要があり、委員会は、次のルートを代替輸送ルートとして推奨する。

@海上輸送ルートの設定(別紙4参照)

 海上輸送ルートについては、神奈川県、千葉県方面等への帰宅困難者への輸送を考慮して設定する。
 海上ルートは、主に、大型旅客船を利用することを想定して、出発港、到着港を選定する。

出発港 東京港 竹芝埠頭、日の出埠頭、芝浦埠頭、晴海客船ターミナル
到着港 神奈川県方面-横浜港 みなとみらい地区内内貿バース
千葉県方面-千葉港 千葉中央地区中央埠頭

A水上輸送ルートの設定

 水上輸送ルートについては、埼玉県方面への帰宅困難者への輸送を考慮して選定する。
 水上輸送ルートは、隅田川、荒川を利用することとし、水上バス等を利用することを考慮して、出発港、到着港を選定する。

出発港 東京港 日の出客船ターミナル等
到着港 埼玉県方面 JR川口鉄橋下流部荒川左岸(JR川口駅から約1.2q)防災船着場(整備中)

 水上輸送ルートは、現在防災船着場の整備が進んでおり、このルートのほか柔軟なルート設定が可能であると考えられる。
 今後、こうした施設整備の進捗状況をみながら、多様なルートを検討すべきである。

B陸上輸送ルートの設定

 陸上輸送ルートについては、都心バスターミナルから内陸部への帰宅困難者への輸送を確保するために、次の陸上ルートを設定する。
 なお、バスについては、緊急通行車両として承認をうけたバスを利用することとする。
 また、海上、水上ルートとの役割分担を考慮し、内陸部へのルートを中心に、深夜バスルートを利用して選定する。

多摩方面 新宿→日野→八王子
埼玉県方面 池袋→小手指→所沢
神奈川県方面 渋谷→溝ノロ→青葉台
品川→上大岡→金沢文庫
千葉県方面 東京→北柏

 都は、これらのルート以外についても、帰宅困難者のニーズに応じて、関係機関と調整の上、多様なルートを検討すべきである。
 なお、バス運行にあたっては、「緊急交通路」の通行可能が前提となるため、都から「バス運行」をする旨の連絡があり、警視庁が、連行に支障がないと判断した時に、都知事が緊急交通車両としての確認を行い、標章を交付することが必要である。

(3)代替輸送可能人員

 代替交通手段として、上記のルートを活用すると想定して試算したところによれば、1日当たり、海上輸送で77,700人、水上輸送で28,960人、陸上輸送で9,240人、合計で115,900人の輸送が可能である。
 これにより、区部の帰宅困難者約335万人に対して、3日間の運行合計で347,700人(約1割)の輸送が可能となる(別紙5参照)。

(4)実施体制等について

@出発港等への案内、誘導の確保について

 代替輸送を実施するにあたっては、要保護帰宅困難者を避難所等避難地から、出発港、出発バスターミナルへ案内、誘導する必要がある。
 このため、区等関係機関は、都と連携しながら適切な案内、誘導を行うことが望まれる。

A受け入れについて

到着港等においては・帰宅困難者を安全に誘導するため、幹線道路への誘導を行うなど、適切な受け入れを行うことが必要である。
 他県市においては、今後受け入れ体制の整備について検討することが適当である。

B輸送計画等について

 都港湾局等関係機関においては、震災時の輸送計画など実践的な体制づくりを図ることが望まれる。また、都のこの代替交通輸送計画の策定に際しては、国の中央防災会議大都市震災対策連絡会議広域輸送分科会等における検討との整合性に十分な配慮を払うことが必要である。
 さらに、都建設局・港湾局において・防災船着場の整備等水上輸送体制の環境整備に努めるほか、七都県市においては、代替交通輸送訓練を検討することが望ましい。

第3部 今後の対策の進め方


 昼間都民対策は、単に帰宅困難者等の安全を確保するだけでなく、混乱を未然に防ぐことで、円滑な応急対策活動の遂行にも資するものであり、東京都の防災対策を進める上で不可欠なものである。
 現在、昼間都民対策は端緒を開いたばかりであり、今後、都を始め関係各機関・各団体の対策実現に向けての努力が求められる。
 都は、関係機関と連携・協力を図り、昼間都民対策を計画的に推進するため、関係機関による「震災時における昼間都民対策推進会議」を設置するとともに、「震災時における昼間都民対策推進計画」を策定することにより、最終報告において提言された事項について推進していくことが適当である。
 推進計画の策定に当たり、特に、都心部での混乱防止対策については、関係する機関も多く、未解明の事項もあるため、以下のとおり「昼間都民対策推進モデル事業」を実施し、ノウハウを得ながら実践的な対策を構築することが望ましい。
 また、対策の根拠となる被害想定等の調査研究を進めることも求められる。
 なお、都は、災害時の昼間都民対策を実施するため、都災害対策本部内に、昼間都民対策に従事する新たな組織を設置することが適当である。

第1節 昼間都民対策推進モデル事業の実施

 商業地を抱えたターミナル駅周辺等では、昼間都民を混乱から一時的に避難させるための実効性ある混乱防止計画を作成するに当たり、ターミナル駅、集客施設等、防災市民組織、ボランティア、防災機関、行政など関係機関・事業所が分担して昼間都民対策を実施するとともに、相互に連携・協力するしくみづくりを進め、昼間都民等への支援体制の構築を図っていく必要がある。
 そのため、区・市は、都と協力し震災時における昼間都民対策推進のための地域協議会を、主なターミナル駅周辺等に設置し、この地域協議会が主体となって、混乱防止計画を策定することが望まい。
 この事業を促進するため、都と千代田区及び中央区は、日本有数の商業地であり買物客の集中する「有楽町・日比谷・銀座地区」を対象にモデル事業を実施し、関係機関等により構成される協議会により、具体的な実施体制について検討する(別紙6参照)。
 都と千代田区及び中央区は、このモデル事業を実施して得られた相互に連携・協力するしくみづくりのノウハウを、今後、他の地区における地域協議会に提供するものとする。

第2節 調査研究の推進

 買い物客等組織に属さない昼間都民に対する対策は重要である。
 しかしながら、現在の対策の根拠となる被害想定においては、比較的買い物客が少ないと予想される平日の帰宅困難者の発生数しか予測していない。
 より客観的なデータに基づ<パニック防止対策を検討するためには、都は今後の被害想定調査等において、休日における帰宅困難者等(主に買物客)の発生状況を分析するとともに、各機関が実施している調査研究結果を活用することが望ましい。

別紙1

<帰宅支援ホームページ・ネットウークシステムの概要>

ア 都は、インターネット上に災害情報のホームページ(HP)を開設し、その中に帰宅困難者等向けの画面を用意し、鉄道事業者・道路管理者や帰宅支援施設が開設したにHPにリンクできるようにするとともに、入力フォーマットの統一化を図る。
イ 鉄道・道路関係機関ほ、自らの鉄道・道路の被害・連行情報をできるだけ早く自社HPに入力するよう努める。
ウ 一時休息所、東京郵政局などの帰宅支援施設は、帰宅支援情報をできるだけ早く自施設のHPに入力するよう努める。
エ 七都県市は、自らのHPに区域内の被害情報を入力するよう努めることが望ましい。
オ 事業所・集客施設は、都などがインターネット上に開設した帰宅困難者等支援HPから得た情報を自由に収集し、掲示することなどにより帰宅困難者に可能な限り、帰宅支援に役立つ情報を提供する。


別紙2

 「集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」作成資料

 集客施設等は、「集客施設等におけるパニック防止7つのポイント」とともに、下記の「同作成資料」を参考にして、施設特性に応じたマニュアルを作成するとともに、施設内の体制づくりを行う。

(表)「集客施設におけるパニック防止7つのポイント」作成資料

@情報収集方法 (ポイント1)施設内・外の安全・安心情報を迅速・的確に収集する。
(収集内容)施設内・外の被害情報、火災の有無、鉄道・道路の被害・運行情報、帰宅支援情報、情報取得方法など個別的な情報を得るための情報等を収集する。
(収集方法)
施設内=巡回による確認の徹底、携帯電話等による迅速な報告、テナントビルについては被害情報連絡責任者の設置。
施設外=
ア インターネット(都防災ホームページ等)、パソコン通信等
イ 駅頭等の大型ビジョン
ウ 交番・消防署や区市町村
エ ビルの屋上、高層ビルの上部階からの観察(近隣施設間の協力も図る)
オ 放送・報道機関(テレビ・ラジオ=マス・メディア各局とともに、コミュニティ局からも収集する。)
A情報提供方法 (ポイント2)安全・安心情報を、施設内の買物客等に適時・的確に提供するとともに、施設外の通行人に対しても可能な限り提供する。
(提供内容)施設内・外の被害情報、火災の有無、鉄道・道路の被害・運行情報、帰宅支援情報、情報取得方法など個別的な情報を得るための情報のほか、災害発生時の行動要領を提供する。
(提供手段)
ア 平常時  公演・上映の前の事前案内
イ 地震発生時  テレビ・ラジオ等の災害報道番組の館内での放送、構内放送、連絡ボードの設置、情報連絡員の配置、インフォメーションの設置、拡声器、非常放送設備
B避難誘導場所 (ポイント3)状況に応じて、施設内、又は施設外に安全に避難誘導する場所を確保する。
(誘導場所)状況に応じて、
ア施設内で、余震、火災等から身の安全を図れる場所(例:宴会場、ロビー)
イ 施設外で、一時集合場所、避難場所など安全に誘導できる場所を定めておく必要がある。
C避難誘導方法 (ポイント4)避難者が不安を持たず、安全確保のための適切に行動できるように避難誘導するとともに、その後の帰宅行動が一時に集中することのないよう働きかける。
(誘導方法)
ア 避難誘導担当が避難誘導先まで誘導する。地図を配付する。
イ 避難誘導導線の安全を確認の上、避難誘導する。
ウ 子供、お年寄り、女性など災害弱者となる人々が多く利用していることに配慮した避難誘導を行う。
エ ターミナル駅等での混乱を防止するため、一時ではなく、緩やかに帰宅が行われるよう配慮する。
(誘導設備等)避難口・避難階段を明示した館内図の掲示、避難場所等の掲示、避難者に配布する地図、包装紙・店内パンフレットヘの掲載、拡声器・懐中電灯の用意
D安否確認方法の周知 (ポイント5)通信手段の確保状況に配慮しつつ、家族等との安否確認方法を周知する。
(周知内容)通信手段の確保状況に配慮しつつ、日本電信電話鰍フ「災害用伝言ダイヤル」を周知する。
(周知手段)
ア 平常時公演前・上映前の事前案内、リーフレットの配付
イ 地震発生時構内放送、連絡ボードの設置等
E相談・救護・保護方法 (ポイント6)施設内のけが人の救護、病弱者、子供・お年寄りの保護を行うほか、施設外の被災者に対しても可能な限り救護、保護を行う。
(相談等の方法)
ア 相談・案内体制をつくる。
イ 水・食料、トイレ、救護体制を確保する
(施設内診療所・厚生施設の提供)なお、本格的な医療救護は都及び区市町村が、一定期日以後の保護については区市町村が行う。
F事業所・施設間の連携 (ポイント7)施設間等で相互に助け合う。
(連携ルール)地域の集客施設等間で、避難する場所の相互提供、水・食料の相互支援、情報交換体制を築く。


別紙5 代替輸送可能人員について

(1)海上・水上輸送人員数について

@前提条件

輸送可能人員数の積算にあたっては、次の点を考慮して積み上げた。
ア 隻数については、東京港寄港の船舶を対象にして、航路、就航隻数、寄港頻度等を考慮して最大限派遣可能であろう隻数を記入した。
イ 人員数は、各船舶とも乗客定員数とした。
ウ ー日当たりの往復回数は、船舶の速力、係船・上下船作業、給油・給水作業等を考慮して最大限往復可能であろう回数を記入した。
 また、各県の港湾は各1港に限定している。
工 船舶が離発着する港湾施設、航路、陸上被災者収容施設に被害がなく、被災者、船舶の安全が保たれている状況下にあると仮定した。
オ 河川における水上輸送力については、航路、基地等が確保されている前提のもとに、船舶の輸送能力のみを考慮して積算した。
カ 人員、燃料等の船舶の運行に必要な条件が満たされていると仮定した。
キ 1隻当たりの乗員数については、定員数としているが、非常時の際には許容範囲内で関係当局の許可のうえ割増で運行することも可能となる。
A積算内訳
ア 海上輸送(東京港〜横浜港、千葉港)

船種 総トン数 隻数 定員数 1日往復回数 1日当たり輸送人員数
外航クルーズ客船 22,000 600 2,400
内航客船 4,000 2,000 16,000
カーフェリー 12,000 700 8,400
レストランシップ 2,600
1,700
1,000
340



600
700
500
150



3,600
4,200
3,000
900
通船 10 10 40 3,200
遊漁船 20 50 80 32,000
官庁船 1,000 200 4,000
小計 77,700

なお、上記積算表は、港湾局港営部港営課の資料を参考にして作成した。(総トン数は、隻数の平均をとったものである。)

イ 水上輸送(東京港〜埼玉県水上基地)

船種 総トン数 隻数 定員数 1日往復回数 1日当たり輸送人員数
水上バス 100
50

200
140

3,200
3,360
遊漁船・屋形船 10 70 40 22,400
小計 28,960

(2)バスによる陸上輸送人員数について(激oス協会の資料参考)

@前提条件
輸送可能人員数の積算にあたっては、次の点に考慮して積み上げた。
ア 都財務局が確保した緊急輸送バス113台うち77台が確保できること
イ バスは1日2往復できるものとした。
ウ 緊急交通路を通行するものとした。'
工 人員等運行に必要な条件が準備されていると仮定した。
A積算内訳

ア多摩方面 新宿→日野→八王子 1日当たり22台×60人×2往復=2,640人
イ埼玉県方面 池袋→小手指→所沢 1日当たり16台×60人×2往復=1,920人
ウ神奈川県方面 渋谷→溝ノロ→青葉台 1日当たり12台×60人×2往復=1,440人
品川→上大岡→金沢文庫 1日当たり21台×60人×2往復=2,520人
工千葉県方面 東京→北柏 1日当たり6台×60人×2往復に720人
合計 =9,240人