断層系の概要

糸魚川−静岡構造線活断層系は、日本列島のほぼ中央部に位置する、全長 140〜 150kmの活断層系であり、北部では東側が隆起する逆断層成分、南部では西側が隆起する逆断層成分、中部では左横ずれ成分が卓越している。
北部 神城断層、松本盆地東縁断層
中部 牛伏寺断層、岡谷断層群、諏訪断層群、釜無山断層群
南部 白州断層、下円井断層、市之瀬断層群

平均変位速度(地形調査等による)

北部 約3m/千年(上下成分)
牛伏寺断層 5〜14m/千年(水平成分)
中部(牛伏寺以外) 3〜10m(水平成分)、約2m/千年(上下成分)
南部 1〜2m/千年(上下成分)

(※)北部、南部での実際の平均変位速度は、断層面の傾きを考慮すると、上 記の値よりも大きくなる。

過去の活動履歴(活動間隔、最新活動時期)(8ヶ所のトレンチ調査による)

活動間隔 最新活動時期
北   部 約2千年 約1500年前以降(白馬)、1000〜1500年前(大町)
牛伏寺断層 約千年 700〜1500年前(松本)
中部(牛伏寺以外) 3〜5千年 約1500〜1700年前(岡谷)、 約1100〜1300年前(茅野)、約1200年前以降(小淵沢)
南   部 未解明 未解明

1回の地震に伴う変位量(トレンチ調査による)

牛伏寺断層 (松本) 6〜9m(最新活動における値)
釜無山断層群(茅野) 6m程度(最新活動における値)

当該活断層系付近に発生したと思われる歴史地震歴史地震(新編日本被害地震総覧(宇佐美 1987)による)

発生年(西暦) 場所 規模
762年 美濃・飛騨・信濃 M7.0以上
841年 信濃(松本付近?) M6.5以上
1714年 信濃小谷村 M61/4
1725年 伊那・高遠・諏訪 M6.0〜6.5
1791年 松本 M63/4
1841年 信濃
1858年 信濃大町 M5.7±0.2
1858年 信濃諏訪(疑わしい)
1890年 犀川流域 M6.2
1918年 長野県大町付近 M6.1、M6.5<大町地震>

検討の経緯

本報告は、第8回地震調査委員会(平成8年2月7日)に地質調査所から提出された資料に基づき、既存資料と合わせて、糸魚川−静岡構造線活断層系の過去および将来の活動について検討し、その評価をとりまとめたものである。
当該活断層系は、日本列島のほぼ中央部に位置する、全長 140〜 150km の活断層系である。当該活断層系についての平均変位速度、過去の活動履歴、1 回の地震に伴う変位量、歴史地震等の調査結果から、過去及び将来の活動につい て評価した。

評価の概要

過去の活動について

最新の活動 当該活断層系は、約1200年前に白馬から小淵沢までの区間(約 100km )で活動し、その地震の規模はM8程度(M73/4〜81/4)であった可能性が高 い。歴史地震としては、 762年の地震(美濃・飛騨・信濃)が、この地震に該当する可能性がある。
過去の活動 牛伏寺断層を含む区間では、約千年おきに、M8程度の規模の地震が発生して きた可能性が高い。具体的な活動区間と規模は、毎回約1200年前の活動と同 様(M73/4〜81/4)であった可能性と、牛伏寺断層と同時に活動した断層区間 が活動毎に変化し、地震の規模もM71/2〜81/2の範囲でその都度異なっていた可能が考えられる。

将来の活動について

牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M8程度(M71/2 〜81/2)の規模の地震が発生する可能性が高い。しかし、地震を発生させる断層区間(場所)がどこまでかは判断できない。

※なお、Mの大きさは 1/4 刻みで評価している。

補足

将来の活動については、基本的に過去の活動の延長線上にあると考えて評価 した。牛伏寺断層では前回の活動(約1200年前)からすでに平均的な活動間隔年数(約千年)を過ぎているが、活断層の活動間隔のばらつきを考慮して、次回の活動時期を標記のように評価した。 また、過去の活動を考慮すると、地震を発生させる断層区間(場所)と規模 の詳細は判断できない。
活断層の活動間隔には、一般に平均間隔の半分から1.5ないし2倍以内の ばらつきがあると言われていることから、次回の活動時期について標記のような幅を持たせた。
18世紀以降の歴史地震に現れているようなM6.0〜M6.5程度 の地震については、活断層調査による評価は困難である。