建設省・資料

平成11年6月末 梅雨前線豪雨災害
『6.29 土砂災害』(速報版)


 平成11年6月29日、中国地方に停滞した梅雨前線による集中豪雨は、夕方の3時間雨量が、広島市安佐南区で147mm、呉市で156mmに達し、同時に土砂災害を多発させました。
 被災箇所は、土石流等災害で139箇所、がけ崩れ災害で186箇所にもおよび、死者31名、行方不明者1名、家屋全壊154戸等、昭和63年県北西部豪雨災害の死者14名、全壊38戸を大きく上回る、近年にない大規模な土砂災害となりました。特に、被害は都市近郊の新興住宅地に集中し、都市型の土砂災害と位置付けられます。
 広島県は過去にも、昭和20年枕崎台風を始め、昭和26年ルース台風、昭和42年7月呉豪雨、前述の昭和63年県北西部豪雨等、大規模な土砂災害を体験し、その度に災害対策として安全な県主基盤整備を推進してきたところでありますが、今回の災害により、都市型土砂災害としての多くの教訓を得るところとなりました。

地形概要

 広島県は、中国山地の南斜面に位置し、全域の約70%が山地で占められている。この地域の地形は、中国山地から瀬戸内海まで、北から南へ階段状に高度を減じている。これを大別すると、北から中国脊梁面、吉備高原面、瀬戸内面の三段の階段山地に分けられる。また、北東一南西方向に発達する山列や谷の存在もこの地域の地形的特徴のひとつである。
 平成11年6月29日の土砂災害により多くの被害を出した広島市西部〜北部地域と呉地域は、瀬戸内面に属し、また北東-南西系の断層谷に挟まれた地域に相当する。これらの地域の地形的特色として、山麓(ペディメント)の発達を挙げることができる。山地の周辺に上方から下方に向かって緩やかに傾斜した山麓緩斜面あるいは山麓地が各所に発達している。浸食を受けてやせ尾根状となっていることが多く、深層まで風化した花嵩岩からなるため、住宅地などへの地形改変が著しい。
 広島市西部〜北部地域の地形は、北東-南西系の構造谷とその周囲の山麓緩斜面に特徴付けられる。特に、土石流の発生が集中した八幡川は、岳山から窓ケ山に連続する北東-南西系の山列とその延長線上ののうが高原に続く山塊をほぼ東西に分断し、この地域に発達する山麓緩斜面を穿ちながら南流し、広島湾に注いでいる。この地域の被災形態は、がけ崩れ(崩壊)より土石流が多く、山麓緩斜面の発達状況と調和的である。
 一方、呉地域の地形は、灰ケ峰山塊から南西に張り出した休山から三津峰山に至る北東-南西系の山塊で特徴付けられる。また、山麓緩斜面も北西側斜面に発達するが、狭長である。山麓緩斜面の上位標高には、急斜面〜急崖が発達しており、ここでの崩壊が顕著である。

地質概要

 中国地方は、日本列島の地質構造区分で分帯すると、西南日本内帯に属している。この地域の地質は、三郡変成岩・古生層・中生層・白亜紀から古第三紀の火成岩と深成岩・新第三紀層・第四紀層などが分布している。この内、広島地域に分布する地質は、白亜紀から古第三紀の火成岩と深成岩が大半を占めている。
 広島市西部地域と呉地域には、強風化花崗岩が全域に分布し、谷筋には二次堆積したマサや風化残留土などから構成される崖錐性堆積物が見られる。また、これらの地域は、特殊土じょう地帯(特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法、昭和27年4月25日、法律第96号)に指定されている。
 花嵩岩の大部分は、粗粒の黒雲母花嵩岩からなり、石英・斜長石・黒雲母などの鉱物から構成されている。各鉱物の膨張率などが異なるため、粗粒なものほど分離しやすく、また、黒雲母や斜長石は容易に風化作用を受け、二次鉱物として粘土鉱物に変質する。さらに、断層や節理などの割れ目に地下水が浸透すると、深部にまで風化作用が進み、深層風化帯を形成する。いわゆる「マサ土」がこの地域の地質的な特徴である。
 崖錐性堆積物は、ルーズな未固結堆積物であり、厚さは数m以下であることが多い。この地域での土石流およびがけ崩れ(崩壊)は、強風化しマサ化した花嵩岩と崖錐性堆積物に発生しており、滑落崖の多くは数m以内である。

気象記録

(1)気象の状況

 梅雨前線は、22日夜には大陸東岸から日本の南海上にかけて停滞。23日朝には大陸東岸で梅雨前線上に低気圧が発生、23日夜にかけて黄海に進んできた。これに伴って、梅雨前線が中国地方西部から北上を開始し、広島県では23日昼前頃から雨となった。
 低気圧は24日朝にかけて黄海から日本海に進み、24日夜には北日本に移動した。このため、一旦日本海に北上していた梅雨前線が、24日の日中に中国地方を横切り、24日夜にかけて四国地方まで南下した。県内は梅雨前線の通過で、終日雨となり所々で強く降った。25日午前中はまだ梅雨前線の影響で雨が残ったが、午後からは梅雨前線が南下して小康状態になった。
 26日午後には、梅雨前線上の九州西海上で低気圧が発生し、27日朝にかけて中国地方を通過した。これに伴って、梅雨前線は四国南岸から中国地方まで北上、26日午後から27日午前中にかけて県下全域で雨となった。その後、梅雨前線は西日本の南岸まで南下したため、県内の雨は再び小康状態となった。
 28日午後から夜にかけて梅雨前線上の低気圧が大陸東岸から黄海に進み、梅雨前線が九州南部から中国地方西部へ北上、県内は夜遅くから雨となった。
 29日朝には梅雨前線上の低気圧が対馬海峡に進み、梅雨前線は中国地方の西部から北上した。このため、梅雨前線に向かう南からの暖かく湿った空気の流入が強まり、梅雨前線の活動が活発となって、県内に雷を伴った激しい雨が降った。午後からは、低気圧が山陰沿岸をゆっくり北東に進み、暖かく湿った空気の流入が一段と強まったため、所々で雷を伴った激しい雨が数時間にわたって降り続き集中豪雨となった。
 30日には、梅雨前線が日本の南海上まで南下し、夕方には県内の雨はほとんど終わった。

広島地方気象台発表  注意報・警報(6月23日〜6月30日)

地域 種類 発表日時 解除日時
警報 注意報
全域 濃霧 6/23 11:30 (切替)
全域 大雨、雷、洪水 6/24 07:40 (切替)
 南部
 北部
大雨、雷、洪水
6/24 14:OO (切替)
全域 大雨、雷、洪水 6/24 16:35 (切替)
 南部 大雨 6/25 11:10 6/25 16:OO
全域 大雨、雷、洪水、濃霧 6/26 15:30 (切替)
全域 大雨 6/27 05:30 6/27 08:30
全域 大雨、雷、洪水 6/29 06:40 (切替)
全域 大雨、洪水 6/29 10:20 (切替)
全域 大雨、洪水 6/29 17:20 (切替)
 南部
 北部
洪水 大雨、洪水
大雨
6/29 21:10 (切替)
 南部
 北部
大雨
洪水、大雨
6/30 04:OO (切替)
全域 大雨 6/30 10:30 6/30 13:30

・解除日時欄の「(切替)」は、次の行の注意報・警報への切り替えを示す。

@大雨の状況
 6月29日午前0時頃から降り始めた雨は、午前中は、県北部を中心として局所的に強まり時間雨量20mm以上を記録したが、広島市を中心とした県南西部では、午前中は時間雨量10mm以下で推移した。午後になって前線の活動が活発になり、13時〜16時にかけて、広島市佐伯区から広島市安佐北区一帯で強い降雨を観測した。また、15時〜17時にかけて大柿町から東広島市の一帯では、呉市を中心として強い降雨を観測した。そして、降雨は、広島市方面で16時頃、呉市方面で17時頃、東広島市方面で18時頃になり順次降り止んだ。
 6月28日〜6月29日の連続雨量は、大野IC199.5mm、戸山271mm、呉市184mmの大雨となった。特に、6月29日の時間雨量は、八幡川橋14時〜15時に81mmとなったのを始め、戸山で14時〜16時に63mm、呉市で15時50分〜16時50分に73mmと記録的な短時間降雨となった。
 今回の降雨は短時間集中型の降雨で、強雨域は広島市佐伯区を中心とした一帯と呉市を中心とした一帯の2方面で発生した。
 土石流災害が多発した、広島市佐伯区一帯を中心とした降雨は、八幡川橋で連続雨量232.5mmのうち、最大2時間雨量でl13mm、最大3時間雨量で144mmに達し、総雨量の49%〜62%が13時〜16時の2〜3時間に集中した。
 がけ崩れ災害が多発した、呉市一帯を中心とした降雨は、呉市で、連続雨量184mmのうち、最大2時間雨量で137mm、最大3時間雨量で156mmに達し、総雨量の74%〜85%が14時30分〜17時30分の2〜3時間に集中した。
 また、今回の降雨は、最大3時間雨量が昭和63年加計災害観測した、155mmに匹敵するものであり、最大時間雨量や最大2時間雨量においては、それぞれ加計災害時の57mm、l09mmを上回る降雨であった。

(1)人の被害【平成11年8月12日広島県災害対策本部14時現在第58報(最終)】

区分 死者 行方不明 負傷者
広島市 20 40
呉市
廿日市市
江田島町
佐伯町
千代田町
安芸津町
東野町
河内町
31 54


(2)家屋の被害

区分 市町村数 棟数
全壊 154
半壊 101
一部損壊 16 327
床上浸水 16 1,363
床下浸水 50 2,840
97(実数52) 4,785


(3)各部門の被害(平成11年8月10日14時現在)

部門 区分 面積・個所数 概算被害額(百万円)
公共土木関係 河川 1,864箇所 17,453
砂防施設 460箇所 6,227
急傾斜 169箇所 5,011
道路 1,251箇所 9,223
橋梁 31箇所 1,109
下水道・公園緑地 11箇所 81
港湾 4箇所 140
3,790箇所 39,244
農業関係 農作物 696.5ha 249
農産貯蔵物(米) 1件
農地 2,638箇所 4,325
農業用施設 3,026箇所 7,971
園芸施設等 20件 12
畜産施設 14件
農業共同利用施設 17件 468
- 13,031
林業関係 山地崩壊地 665箇所 10,422
林道 579箇所 986
自然公園 10箇所 35
造林 97箇所 55
林産施設 1箇所
1,352箇所 11,500
水産業関係 水産物 3件 55
漁港 1箇所 25
養殖施設 2箇所
漁船 3隻
- 87
教育・文化財関係(私学除く) 小学校 19箇所 47
中学校 9箇所 57
高等学校 7箇所 21
盲・ろう・養護学校 0箇所 -
大学・短期大学 1箇所 35
神社・仏閣・文化財 7箇所 32
官公庁・その他 9箇所 51
52箇所 243
福祉・衛生関係 福祉施設 7箇所 200
水道施設 143箇所 589
一般廃棄物処理施設 2箇所 27
152箇所 816
商工業関係 商工業施設 715箇所 1,444
その他 県施設 2箇所 693
合計 67,058