目次

1.「マスコミのヘリ運航 自粛か共同取材必要」(大阪朝日新聞2000年1月10日)

2.「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアルについて」(日本新聞協会航空取材問題に関する小委員会)(平成8年1月17日)

3.「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」(運輸省航空局)(平成8年1月26日)

4.「運輸省と協会、『災害時救援機の安全対策マニュアル』で合意」(『新聞研究』1996年2月号)

5.「マニユアル運用で話し合い 災害時の安全対策 航空取材問題小委と運輸省」(『新聞協会報』97年1月28日号)

6.「航空取材に関する方針」(昭和40年6月9日第204回編集委員会)・「航空取材要領」(平成9年3月13日第557回編集委員会改定)

7.「最近の代表取材の例」


大阪朝日新聞2000年1月10日

マスコミのヘリ運航 自粛か共同取材必要

 被災地上空でのマスコミによるヘリコプター取材は人命にかかわる場合、一定時間自粛するか共同取材にする必要がある-検証委員の広井脩・東京大社会情報研究所長が提案した。
 阪神大震災では、「ヘリの騒音で倒壊家屋の下敷きになった人たちの声がかき消された」などの批判が集中。一時は国の防災基本計画に取材規制を盛り込む案も浮上した。
 広井所長の聞き取り謂査でも「救命救助の活動に非常な支障がある。共同取材などが考えられないか」(兵庫県)、「市民から電話で受けたマスコミヘの苦情でもヘリの問題が一番多く、二回、三回と自粛を要望したが当座は減ってもすぐ違うヘリが来た」(神戸市)なピの意見が出た。
 広井所長は、「重症患者の搬送」や「救助救援のためのサイレントタイムをつくる」など、人命にかかわる目的のためであれば.「マスメディア自身がことの重要性をよく考え、どういう条件であれば可能か真剣に検討してほしい」と訴えた。
 ヘリ取材について、日本新聞協会(新聞、通信、テレビ百五十四社加盟)は一九九七年に「航空取材要領」を改訂。飛行の安全確保と騒音防止などを考え、多数の取材機の飛行が予想される場合は、必要に応じ、代表取材・共同取材も視野に取材方法などについて事前協議をする、と定めている加盟社の中で低音のヘリを導入する動きもある。


新協1761号
平成8年1月17日

運輸省
航空局長
黒野匡彦 殿

社団法人日本新聞協会
航空取材問題に関する小委員会
委員長 菅家延征

災害時における救援航空機等の安全対策マニュアルについて

 貴殿より提示されました標記マニュアルにつき、当委員会としましては、その趣旨を十分に理解し、新聞・報道機関の航空取材・報道の自由を規制・制約するものではないことを条件に、協力する所存です。
 なお、取材活動、報道の自由と本マニュアルとの関係をめぐり、当委員会と航空局との間で再三の協議を積み重ねた経緯があります。従いまして、下記の経緯をご確認の上、本マニュアルの適用に当たっては、事前に十分な調整を行うとともに、災害時における報道機関の役割と取材活動に十分配慮すべきものであることを、関係機関、関係協カ団体、及び航空局各出先機関に周知徹底されるようお願いします。

@本マニュアルの案文作成に当たり、当委員会と運輸省航空局技術部運航課長との間で、二度にわたる協議と、三度にわたる文言調整、その他の調整を積み重ねた。
Aこの中で、当委員会は、航空機を使用する報道機関として、救援航空機等の安全対策に十分な協力をする意思があることを表明するとともに、航空機が輻輳する空域の飛行については、新聞協会加盟各社の自主的な判断による飛行等のルール(別紙航空取材方針・要領)が確立しており、政府機関はその実情を十分に理解すべきだ、との指摘をした。とりわけ、本マニュアルが将来、政府機関による取材・報道規制につながる可能性があるのではないか、との強い危倶を指摘した。
Bこれに対して運航課長は、本マニュアルによって取材活動を規制する意図はないことを再三表明した。また、航空局長名で出された当委員会に対する本マニュアルの協力要請文書(空航第8号・空保第1号)では、「本マニュアルは、災害時における情報提供に関する報道機関の役割について十分認識し、取材活動に十分配慮した上で、災害時における被災地上空等で輻輳する航空機の安全確保と円滑な救援活動の支援を目的とする実践的活動要領であり、報道活動の自由を制限したり、取材活動を規制したりする趣旨のものではない」との見解が付記された。
C当委員会は、上記三項の趣旨・及び当委員会の立場を、本マニュアルで定める関係機関、関係協力団体、及び航空局出先機関に周知徹底するよう要請、運航課長も了承した。

以上
空航第8号
空保第1号
平成8年1月17日
社団法人日本新聞協会
航空取材問題に関する小委員会
委員長 菅家延征 殿
運輸省
航空局長
黒野匡彦

災害時における救援航空機等の安全対策マニュアルについて



平素より航空行政につきまして、格段のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度、標記マニュアルにつきまして、別添のとおり策定いたしましたので、何とぞ、ご協力方お願い申し上げます。
 なお、本マニュアルは、災害時における情報提供に関する報道機関の役割について十分認識し、取材活動に十分配慮した上で、災害時における被災地上空等で輻輳する航空機の安全確保と円滑な救援活動の支援を目的とする実践的活動要領であり、報道活動の自由を制限したり、取材活動を規制したりする趣旨のものではないことを申し添えます。


空航第35号
空保第5号
平成8年1月26日

災害時における救援航空機等の安全対策マニュア

1.目的

 このマニュアルは、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第34条の規定に基づき作成される防災基本計画等を踏まえ、関係機関及び関係協力団体の合意により、大規模な自然災害その他災害に際して、被災地周辺空域を飛行するヘリコプター等の航空機について、救援活動に従事する航空機の飛行の優先に配慮するなど迅速かつ円滑な救援活動を支援するとともに、輻輳する航空交通の中での安全運航を確保するため、所要の手続き等を定めることを目的とする。

2.関係機関及び関係団体の協力

(1)警察庁、防衛庁、運輸省(航空局)、海上保安庁、郵政省及び消防庁は、関係機関として、航空機による円滑な救援活動及びその安全確保のため相互に密接に協力する。
(2)関係機関は、(社)日本新聞協会、(社)全日本航空事業連合会及び(社)日本航空機操縦士協会に対し、関係協力団体として、可能な限り協力を求めるものとする。
(3)自然災害その他災害の種別に応じ、当該機関の所掌事務と関係ない機関は調整の上、関係機関から除くことができる。

3.航空機安全対策

(1)情報の収集及び整理等
 運輸省航空局は、飛行計画をはじめ運航者からの情報等により航空交通状況の把握に努めるとともに、別添のとおりの情報を整理し、必要に応じ関係機関(運輸省航空局を除く。)及び関係協力団体(以下「関係機関等」という。)に通報する。
(2)運輸省航空局の措置
 運輸省航空局は、(1)の情報又は関係機関等からの要請を勘案して航空機安全対策に係る以下の措置を必要に応じて講じるとともに、その旨関係機関等に通報する。
@飛行の注意喚起、自粛協力要請等
航空情報(ノータム)の発出により以下の措置を講じるものとする。
a.一定空域での飛行の注意喚起。
 ただし、災害発生直後、関係機関等から当該機関の救援活動開始前に運輸省航空局(地方航空局及び空港事務所等(以下「地方航空局等」という。))に対し、ノータムによる注意喚起の発出要請がなされた場合も含む。
b.救援機(航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)第176条に規定する航空機をいう。以下同じ。)の飛行経路の周知等(必要と認めた場合は救援機以外の航空機の飛行経路の周知等も行う。)による救援機と救援機以外の航空機との飛行経路等の分離のための協力要請。
c.さらに航空機が輻輳して危険であると考えられる場合又は救援活動に支障(騒音、気象状態等による支障を含む。)があると判断される場合は、救援機以外の航空機に対する一定空域での一定期間の飛行自粛の協力要請
A飛行計画受理時のブリーフィング強化の指示
 関係機関等及び運輸省航空局のとった措置に関し、飛行計画を通報する操縦士等に対し可能な限り必要な指導及び注意喚起を行うよう関係する地方航空局等に指示する。
B航空交通情報の提供についての周知
a.場外離着陸場等の運用者が、当該場外離着陸場等の周辺空域において航空交通の輻韓等により救援活動に支障があると判断し、当該空域において無線電話による航空交通情報の提供を行う場合には、その旨のノータムを発出し、関係者に対し当該航空交通情報の聴取を推奨する。
 航空交通情報の提供を行う場合において、当該場外離着陸場等が、飛行場管制業務又は飛行場情報提供業務が実施されている飛行場等を中心とする半径9Kmの範囲内又はこれに近接してある場合には、当該場外離着陸場等の運用者は当該業務を実施している機関と調整を行った上実施するものとする。
b.ノータムに記載すべき事項は、次のとおりとする。
イ.航空交通情報提供の実施者
口.提供範囲(半径5海里以内、対地高度2000フィート以下の空域を目安として定める。)
ハ.提供内容:航空交通情報その他必要な情報(例:離着陸する順序、上空待機方法、安全に関する助言など).
二.実施期間
ホ.呼出名称
へ.使用周波数
ト.利用方法:対象空域を飛行しようとする航空機は航空交通情報提供の実施者と通信設定を行い、航空交通情報その他必要な情報を得ること。
Cその他
a.災害に関係する特殊飛行(救援活動の飛行を除く。)の調整
イ.公的機関の依頼する航空写真撮影
運輸省航空局は、依頼元の機関に連絡し、撮影飛行の必要性、緊急性等を確認の上、管制機関又は航空交通情報提供の実施者と飛行日時、高度等に関し十分分調整して飛行を実施するよう協力を求める。
口.災害に係る視察飛行
 運輸省航空局は、災害に係る視察飛行の実施主体に対し、管制機関又は航空交通情報の提供の実施者と十分調整して飛行を実施するよう協力を求める。
b.関係協力団体への協力要望
 運輸省航空局は、関係機関等と調整の上、救援機の円滑な運航、航空機の安全確保及び地上の騒音への一層の配慮につき関係協力団体に対し協力を求める。
c.救援活動の支障となる飛行に対する協力要望
 被災地上空等で救援活動の支障となるような飛行がなされていると認められる場合であって、関係機関等から、当該飛行を行っている運航者(航空機の特定が可能な登録番号等)及び飛行の状況(概ねの時間、場所、飛行がどのように救援活動の支障となっているかの概況等〉につき通報があったときは、運輸省航空局は、事実関係を確認し、当該航空機の運航者に対し、関係機関等と調整の上、円滑な救援活動への配慮、安全運航の確保等につき協力を求める。
d.危険な飛行に対する措置
 被災地上空等で危険な飛行がなされている場合であって、関係機関等から、当該飛行を行っている運航者(航空機の特定が可能な登録番号等)及び飛行の状況(概ねの時間、場所、飛行がどのように危険であるかの概況等)につき通報があったときは、運輸省航空局は、事実関係を確認の上、当該航空機の運航者に対し適切な措置を講じる。
(3)関係機関等の措置
@上記の運輸省航空局の措置を下部組織への周知徹底などに努める。
A入手した危険な飛行等航空機の安全に支障を及ぼす情報については、運輸省航空局(地方航空局等を含む。以下Bにおいて同じ)から求めがあれば可能な場合には提供する。また、当該情報の真否を実地調査によって確認した場合も同様とする。
B関係機関等は、上記(2)のCのaに掲げる飛行を行う場合又は飛行するよう依頼された場合は、予め、速やかに運輸省航空局と所要の調整を行う。

4.推進体制等

(1)運輸省航空局
@運輸省航空局においては、航空機安全対策を有効に実施するため、情報の収集、及び整理並びに関係機関等との所要の通報及び連絡・調整を行うとともに,必要な措置を講じる。
A運輸省航空局は、災害の種類及び規模又は救援活動の必要とする位置・範囲等を勘案し、必要と認めるときは、その都度指定する地方航空局等において運輸省航空局の業務の一部又は全部を行わせることができる。この場合、運輸省航空局は速やかにその旨を必要な関係機関等に通報する。
(2)連絡調整会議
@関係機関及び関係協力団体は,救援活動に支障を生じる事態が発生する等,災害時における航空機の安全対策に関し、協議し、又は連絡調整する必要があると認めるときは、運輸省航空局に議題を示して会議の開催を求めることができる。
A運輸省航空局は、上記@の要求があったとき又は必要があると認めるときは、速やかに連絡調整会議を開催する。なお、連絡調整会議の庶務は運輸省航空局技術部運航課が行う。
(3)連絡体制
関係機関等の連絡調整は別添のとおり行う。

5.その他

(1)このマニユアルの実施細目は、必要に応じ、関係機関等との協議によって定める。
(2)運輸省航空局又は関係機関等が情報を公表するときは、所要の調整を行った上で行う。
(3)このマニュアルの運用に当たり、不都合が生じた場合には、必要に応じ、関係機関等と協議の上、本マニュアルの見直しを行う。
附則  (平成8年1月26日空航第35号空保第5号)このマニュアルは、平成8年1月26日から施行する。
附則  (平成8年7月19日空航第481号空保第103号)このマニュアルの一部を改訂し、平成8年7月19日から施行する。


『新聞研究』1996年2月号

運輸省と協会、「災害時救援機の安全対策マニュアル」で合意

 一月十七日の阪神大震災一周年当日、日本新聞協会の編集委員会・航空取材問題に関する小委員会は、運輸省航空局との間で「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」の策定に合意した。政府による取材規制の強化を警戒しつつ、ぎりぎりの妥協点を探った結果である。
 交通網が数日問にわたって全面まひした阪神大震災では、ヘリコプターによる上空からの取材が大きな威力を発揮した。被災情報をいち早く全国に伝えるという報道の使命においても、報道各社の航空機は極めて重要な役割を果たしたと自負している。
 しかし、その反面、残された課題や教訓も少なくない。
 報道各社には、地震発生後三、四日目ごろから、ヘリコプターの騒音に関する苦情や抗議の電話が相次いだ。また、発生八日後には、参院の代表質問でも「ヘリの騒音が、被災者救出の妨げになっている」などの問題が取り上げられた。この間、運輸省航空局は、報道機のみを対象としたものではないが、神戸市周辺の飛行自粛を要請するノータムを出している。
 阪神大震災では、警察、消防、自衛隊などから、多数のヘリコプターが出動した。取材機のフライトは、発生後二日目ぐらいまでがピークであり、苦情が増えた時期とは必ずしも一致しない。各社に寄せられた苦情・抗議の内容を調べてみると、報道機と特定した上での電話は極めて少なく、誤解に基づく苦情もあったようだ。
 ただ、どこのヘリコプターであれ、宿命としてかなりの騒音を発していることは間違いない。なかには、社名を特定しての抗議があったことも事実である。当然、小委員会事務局は迅速に、騒音への配慮と安全飛行への注意を加盟各社に呼びかけた。各社が取材現場に徹底させたことは言うまでもない。
 しかし、こうした努力にもかかわらず、テレビリポーターの不用意な発言や報道内容への批判とも相まって、報地ヘリに対する風当たりは、取材規制への動きへと変化し始める。

取材規制の動き

 二月末には、連立与党の危機管理プロジェクトチームが中間報告をまとめ、報道ヘリについて「代表取材、共同取材などの自主規制を要請する」ことを盛り込んだ。さらに政府サイドでは、中央防災会議の災害基本計画専門委員会が、防災基本計画見直し作業の過程で、航空取材の規制を検討。座長代理私案の形で、「大地震発生後七十二時間程度、被災地及びその上空における取材の禁止または自粛」を打ち出すに至った。
 事態を重視した小委員会では、すぐに緊急会議を招集、同専門委員会に対して取材規制案に強く反対することを申し入れ、ひとまず事なきを得た。
 以上、くどくどしく阪神大震災以来の経緯に触れてきたが、それというのも、今回合意した災害時マニュアルが、こうした一連の動きの中から出てきたものと思われるからである。
 航空局が昨年末に示したマニュアルの原案には、随所に「代表取材・共同取材の要請」「必要に応じて指導」などの文言があった。文書の構成も、ことさら報道機を別扱いにする形になっていた。
 この原案に小委員会側は強く反発、二回にわたる航空局運航課長を交えた全体協議で、活発な論議を展開した。航空局側との修正案のやりとりも三度ほど積み重ねた。

二重三重の歯止め

 出来上がったマニュアルの文書は、原案に比べれば大幅に改善されている。しかし、立場の違いは埋めきれず、将来、政府がその気になれば取材機の規制に利用出来なくもない内容を含んでいることは認めざるを得ない。マニュアルにある「大規模な自然災害その他災害」という定義も、厳密に詰め切ったとは言えない。
 どうしても不満は残るのである。しかし、社会的配慮などを勘案すれば、け飛ばしてしまうことも得策ではない。結局、マニュアルとは別に航空局との間で文書を取り交わし、取材規制の歯止めとする方法を選択した。
 まず、新聞協会に対してマニュアルの協力を要請する航空局長名の文書に、@災害時における報道機関の役割を認識し、取材活動に十分配慮すること、A取材活動を規制する趣旨のものではないこと、の二点を明記させた。
 一方、小委員長名で局長に提出した文書では、「航空取材・報道の自由を規制・制約するものではないことを条件に、協力する」と明記した。条件付き協力である。
 さらに、@自主的な安全対策のルールとしてすでに確立している新聞協会の「航空取材方針・要項」を十分に認識すること、A航空局側が再三、「このマニュアルは取材活動を規制する趣旨のものではない」と表明し、局長名の文書にもその旨を明記した経緯を確認すること、Bこれらの事実や経緯を、関係各省庁や航空局の出先機関、航空機運航業者などにも周知徹底すること、などの点について、運航課長との間で合意した経緯も付記してある。
 将来、このマニュアルをたてに航空取材が規制されることのないよう、二重三重の歯止めはかけたつもりである。今後は、規制の口実やきっかけを与えないよう、安全運航や騒音への配慮に一層の努力を続けることが、我々の責務だと思っている。
 最後に一言。今回の一連の折価を通じて感じたのは、大災害時の取材規制問題は恐らく、航空取材部門に限ったことではなく、いずれあらゆる分野で起きてくるのではないかという予感である。
 阪神大震災を経た政府側の本音は、地上での各種取材活動を含めて本格的な取材規制に乗り出すことにあるに違いない。その意図が、まだ形になっていないだけのことではなかろうか。報道する側としては、この点を十分に認識しておく必要があろうかと思う。もちろん、報道の役割について社会的な理解を深める努力も含めてのことである。
(新聞協会・編集委員会・航空取材問題に関する小委員会委員長管家延征・朝日新聞東京本社航空部長)

「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」の概要〈目的)

大規模な自然災害その他災害に際して、被災地周辺空域を飛行するヘリコプター等の航空機について、救援航空機の円滑な活動の支援及ぴふくそうする航空機の安全確保を図る。
〈関係者〉
1.関係機関=運輸省並びに救援機等の航空機を運航する警察庁、防衛庁、海上保安庁、消防庁
2.関係協力団体=日本新聞協会、全日本航空事業連合会、日本航空機操縦士協会
〈安全対策の主な内容〉
1.「見張りの強化などの注意喚起」「救援機と一般機の飛行経路等の分離のための協力要請」「特に混雑の激しい一定空域について、一定期間内の飛行自粛要請」など、ノータムの発出
2.飛行場以外で救援機等が離発着する場所における航空交通情報提供のルール設定。
3.航空機の騒音等により、地上の救援活動の支障となる飛行をした運航者に対し、個別に協力の要望をしたり、危険な飛行を行った運航者に対し、適切な措置を実施したりする。

『新聞協会報』97年1月28日号

マニユアル運用で話し合い 災害時の安全対策 航空取材問題小委と運輸省

 編集委員会航空取材問題に関する小委員会の幹事団は二十四日、日本海の重油流出事故などで取材機や救援機の安全飛行のため注意喚起を求める航空情報(ノータム)を発出するケースが相次いだことから、運輸省の石塚武美航空局技術部運航課長を招き、事故防止の在り方について事務局会議室で懇談した。
 取材機の安全飛行をめぐる最近のノータムでは、十七日に重油流出事故をめぐり、日本海沿岸の一部空域での注意喚起要請が新聞協会への連絡・確認を経ずに発出された。また、昨年十二月の長野県小谷村での土石流被災では注意喚起要請が新聞協会へ通報のうえ出されている。
 新聞協会は昨年一月に発効した「災害時における救援航空機等の安全対策マニュアル」に合意。航空取材・報道の自由を制約しないことを条件に、運輸省など関係省庁と協力することにしている。
 マニュアルでは、運輸省が要請に応じて、各機関との事前調整のうえ飛行の注意喚起や自粛を要請するノ一夕ムを発出することを定めているが、運用の詳細が未整備で、これまで適用例はない。
 懇談の席上、石塚課長は運用規定の整備に向けて、マニュアル合意機関による連絡調整会議を三月後半に開催したいと提案するとともに、「マニュアルに基づくものかどうかに関わらず、取材機にかかわるノータムの発出に際しては今後、新聞協会に事前に連絡したい。重油流出事故では協会と十分な事前連絡がつかず、残念だった」と述べた。
 これに対し幹事団からは
「飛行自粛・禁止が措置されることを恐れる」「当方が想定していない事件・事故で、マニュアルにより取材の制約が生まれることを危ぐしている」との意見があった。
 石塚課長は「事前調整のないまま自粛・禁止を求めることはない。中立の立場から、各機関が納得できる要請を行う」「災害以外の場合に運輸省から自粛を求める権限はない。要人警護も飛行の安全とは無関係であり、新聞協会と警察庁などの事前協議の結果に基づき、政府の一員としてノータムを出している」と説明した。




航空取材に関する方針


(昭和40年6月9日 第204回編集委員会)
 航空機による取材・報道は、機種・機数の増加と、取材方法の多様化によって複雑になり、取材対象との関係や、安全性について慎重な配慮が必要であるから、取材・報道に際しては
1.取材対象に迷惑をかけたり、行事の運営を妨げるような取材・報道活動はしない。
2.安全性を確保するため、危険な飛行は避ける。
の2点に特に留意する。
 この基本方針に基づき、航空取材要領を別に定める。

航空取材要領

(平成9年3月13日  第557回編集委員会改定)

 日本新聞協会編集委員会が決めた「航空取材に関する方針」に基づき、報道の役割と責任を自覚しつつ、航空法の精神に従ってすべての取材・報道が安全かつ円滑に行われるよう、航空取材要領を定める。
(1)取材および往復路の飛行に際しては、空中衝突事故を回避するため、見張り要員の向上を基本として見張りに万全を期すとともに、他機からの機体の視認性を高める措置を講じるよう努力する。
(2)取材空域内においては、必ず航空機総合間通話用周波数(122. 6メガヘルツ)を聴取するとともに、自機の位置及び行動等の情報を他機に提供する。
(3)航空機の騒音によって取材対象の行事や作業ならびに一般の日常生活に支障を与えないよう、また地上の人または物件に危険を及ぼさないよう、必要な高度及び速度の維持に十分注意する。
(4)同一対象を複数機で取材する場合、以下の原則に従って整然と飛行し、空中衝突の防止に万全を期す。
@回転翼機は右旋回とする。。
A見張りに専従できる要員を乗務させる。
B取材空域に侵入する時及び同空域から離脱するとき、または他機の後ろにつく場合や追い越し、経路変更などを行うときは、航空機相互間通話用周波数でその旨を通報する。
C他機と一定の間隔を保つとともに、追い越しや線路変更などに際して、急激な操作を行わない。
D空中に停止して特定の位置を独占したり、停止に近い速度で他機の取材を妨げる言ったりするような行動をしない。
Eやむを得ずこれらの原則によらない場合及び速度の異なる航空機で取材する場合は、他機の経路・高度と交錯しないよう、取材群の1番外側を飛行する。また、これらの取材機にも取材の機会を与えるよう、各機は互譲の精神をもって行動する。
(5)飛行及びその安全に関して、搭乗者は機長の指示に従う。
(6)予定される行事などで多数の航空機が集まることが予想される場合は、取材方法又は飛行のルールなどについて、必要に応じ関係者間で事前協議を行う。
(7)航空取材に関する問題については日本新聞協会に申し出があれば同協会編集委員会で審議する。
                                                         以上

(付記)

 航空取材要領について、その実効性を高め、理解を深めるためのガイドラインとして、以下の点に留意しつつ、広く報道航空関係者への周知徹底を図る。

(見張りについて)

@見張り要員に対しては、パイロットの資格を補う方法など、効果的な見張りができるよう、研修・教育などに努める。
A見張り要員は積極的に機長の補佐を行う。
B搭乗者は取材現場の往復にも十分に注意を払う。

(視認性を高める方策の具体例)

@着陸灯を飛行中可能な限り点灯し、昼間においても正面からの視認性向上に努める。
A白色閃光灯(ストロボライト)を装着し、側方からの視認性を向上させる。
B機体、ロータープレート上面に高視認性塗装を実施し、発見を容易にさせる。
(航空機相互間通話用周波数の使用例)
@取材空域に入る前に「社名、機種、位置(方向)、高度、意図」を通報する。
(例)「○○新聞365、西2マイル、1500フィート、この高度で侵入します」
A空域内では、他機の死角に入って飛行し、かつ距離が近い場合は「相手社名、社名、機種、位置、意図」を通報する。対象機は応答する。
(例)「△△テレビさん、○○新聞365、現在左後方やや高め、これから左前方に行きます」
   「△△テレビ了解」
B空域から離脱する場合、「社名、機種、離脱方向」を通報する。
(例)「○○新聞365、取材終了、東に1500フィート で離脱します」
(注1)上記の例はいずれも、交信に際し定められた連絡設定を行うことを前提とする。
(注2)いずれの場合も社名および機種は識別しやすい表現を用いる。

(管制機関等の積極利用)

 他機の状況及び飛行に必要な情報を入手するため、管制機関等を有効に活用する。

(騒音等への配慮)

@騒音への配慮と安全確保のため、最低安全高度等に留意しつつ、必要な高度・速度の維持に努める。
A複数機で取材する場合の原則でいう空中停止またはそれに近い速度とは、おおむね30ノット以下を目指すとする。

(事前協議、地域間の連携等)

@自主取材・各社取材を原則とするが、飛行の安全確保と騒音防止等を考慮し、予定される行事等で多数の取材機の飛行が予想される場合は代表取材・共同取材等の方策を講じることもある。
A本要領の実効性を高めるうえで地域間の情報交換や連携が重要であることを認識し、その具体化に努める。
B本要領の趣旨について、運航担当者のみならず航空取材にかかわるすべての関係者に理解を得られるよう努める。
                                                              以上


新聞協会提供資料

「最近の代表取材の例」

@オウム真理教・麻原教祖遠捕時(1995年5月)

 4月、山梨県上九一色村の教団施設家宅捜索の航空取材に関し、同村住民から東京航空事務所騒音対策課に苦情が寄せられ、運輸省東京航空局飛行場部騒音対策センターを通じて事務局に連絡が入る。5月15日、当時の編集委員会代表幹事から事務局に「安全確保と騒音対策のため、教祖逮捕の際には共同取材が望ましい」との連絡があり、航空取材問題に関する小委員会各社の意向を打診、放送各社は自主取材を決め、新聞・通信は日経を除く7社が参加の意向を示す。翌16日、上九一色村・富士宮の教団総本部での麻原教祖逮捕後、警視庁までの移送ルート上空で代表取材が行われる。

Aオウム真理教・麻原(松本)被告第3回〜11回公判(1996年5月〜10月)

 麻原被告の初公判(4月24日)の航空取材に関し、公判当日に警視庁警備一課から各社に飛行自粛要請があり、後日、運輸省航空局騒音被害センターから事務局に対し「東京拘置所から東京地裁に至る移送ルート周辺で騒音苦情が寄せられているので代表取材に出来ないか」と連絡が入る。5月9日開催の第548回編集委員会は、在京写真部長会ならびに航空取材問題小委・放送社に対し、同15日開催の破防法弁明と今後の麻原被告公判について代表取材が可能かどうか協議を要請。航空取材問題小委・放送社会合、在京写真部長会と航空取材問題小委新聞・通信社会合は直ちに会合を開き、破防法弁明は自主取材、麻原被告の第3回公判(同23日)から当面の間は代表取材とすることを決定。航空取材問題小委・放送社は8月5日の第7回公判まで、新聞・通信社は10月44日の第11回公判まで代表取材を実施、これ以降は自主取材を行った。